「普通」なんかない

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 鈴木は、自分には友沢を傷つけることが出来ない、という意味で言ったつもりだった。だが友沢は、友沢自身がそんなことを受け入れられるはずがないと言われた、と思ったらしい。食い気味に否定してくる。鈴木の口から呆れた声がこぼれる。 「意地張るなよ。お前は普通の……」 「普通の人間なんていません」  言いかけた鈴木を遮って、友沢は断言した。鈴木は二の句が継げずにいる。 「俺だって、自分勝手だし、変なやつです。男は恋愛対象じゃないのに、それでも、先輩ならいいって思ってるなんて、変でしょ」  鈴木は眼鏡の位置を直して、乾いた唇を湿らせた。何を言い出すのかと思えば、とんでもないことを口にする。それがどういうことか、友沢は何も分かっていない。友沢を諦めさせなくては。そう思うけれど、素直に喜んでしまう自分を抑えるのに必死で、頭が上手く回転しない。友沢相手に平静を装い続けるのは、鈴木には難しかった。せめて一矢報いなくてはと攻撃を繰り出す。 「……夏村さんは、どうするんだよ」     
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