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「彼女のことは嫌いになったわけじゃないです。ただ、今はもう連絡取ってなくて。仕事辞めるって言ってたから、別れることになると思います。彼女は若くて、可愛くて、これからも素敵な出会いがあると思います。……でも、先輩は俺じゃなきゃ駄目なんでしょ」
無言が、肯定してしまう。
「ヒロさんは、住む世界が違うって言ってたけど、そんなことない。俺、ここにいます」
「友沢……」
鈴木は胸を抑えた。自分で制することのできない、胸の高鳴り。喜びを感じながら、鈴木は期待させないでくれと叫びそうだった。
――傷つけたくない。傷つきたくない。傷つけたくない。
「先輩は、俺のこと好きだったけど、俺が嫌がると思ってずっと隠してましたね。告白した後も、俺が嫌がることはしなかった。遠慮して、我慢して、それを感じさせまいとして」
「自分が傷つきたくなかっただけだ」
「それもあるかもだけど、俺のこと、本当に大切に思ってくれてた。俺が、栄子を好きになった時は、俺、先輩を利用したのに……最後まで協力してくれました」
「やめろ」
「栄子に相談されて俺の気持ちを確かめたりとか、ホント、先輩がどれだけ傷ついてきたか……。俺は最低のことばっかしてたのに、先輩は全力で優しかった。その気持ちに応えたいんです。もう泣かせません。これからは俺、先輩のことを守ります」
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