「普通」なんかない

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 鈴木は、両手で顔を覆って震えていた。言うべきことはすべて言ったと思い、友沢は満足感を覚えながらソファに体を沈めた。しばらくして立ち上がった鈴木が、気づいた時には既に友沢にのしかかっていた。 「い、いきなり近いっす!」  鈴木の長い指がうろたえる友沢の顎をとらえる。 「せ……っ!」  深い口づけ。短く息をつく瞬間があるかないかで、鈴木の舌が友沢の中に滑り込んだ。ある程度予想していた展開とはいえ、自分の喉が鳴った音に友沢は驚きを隠せなかった。 ――こんなに? やべぇよ。  絡んだ舌がぬるりとなぞりながら離れていき、それに続いて唇もゆっくりと離れたが、鈴木の顔は至近距離のままだ。その気配を感じ、友沢はそっと目を開けた。強い視線が注がれている。 「後悔するなよ。……いや、絶対後悔する」   背筋にヒヤリと冷たいものが走る。 「こういう時、普通は後悔させないぞって言うんじゃ」 「普通はな」 「え」 「俺は、普通じゃない。知ってるだろ」 「せんぱ」  最後まで言わせてもらえず、再び口をふさがれる。柔らかなソファに背を押しつけ、鈴木の体重を感じながら、友沢は既に少し後悔していた。     
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