となりの西田さん

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 奇妙で優しい隣人のいない生活は、私というパレットからひとつの色を抜いてしまったかのように物足りないものであった。 「いってきます」  ある日、いつものように家を出るととなりの空き地に『安全第一』と書かれた看板が立てられていた。となりには工事の計画表が掲げられている。  施工業者や住所とともに、依頼主や建物も名称も書かれている白いプレートに目をやった。  そこには懐かしい名前が記されていた。 『発注者 西田様 新居建設工事』  思わず、口元がほころんだ。  西田さんが、帰ってくる――。  私は基礎工事の準備をしているひと達の後ろ姿を見ながら、空き地にそっと声をかけた。 「おかえりなさい、西田さん」
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