小さな恋

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 Mくんの家では、冷えピタとマスクをつけた娘の王子様が、照れながら、星柄のリボンのブラウニーを受け取ってくれた。 「ぼくも、バレンタインにあげようと思ってた」  Mくんのママが言うには、外国のバレンタインデーは、大切な人に花束を贈る日らしい。  さすがに花束は恥ずかしかったのか、Mくんのプレゼントは花のイラストが描いてあるカードとキャンディだった。 「あっ、髪の毛のリボン、チョコと同じだね」  Mくんは気づいた。  帰りの車の中で、娘はずっと花のカードを眺めていた。  いつのまにか人を好きになることを知った私の娘。  君はこれからもたくさんの恋をするだろう。  楽しい恋、嬉しい恋。悲しい恋、苦しい恋。もしかすると、ドロドロの恋やギスギスの恋もするのかもしれない。  だけど、恋に一番大切なことは、8才の君が、もう知っている気がする。  恋愛は一人じゃできない。相手を知ろうとして、相手の幸せを願っていないと。  それを忘れなければ、きっとどんな恋も、本当には君を傷つけないと思う。  ママは応援してる。  パパはちょっぴり寂しそうだったけれどね。  ――パパ、家には、星柄のリボンのブラウニーが、もう一個あるよ。
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