最愛の君に最速で愛を

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一瞬で過ぎていった 春も夏も秋も美しくて こんな俺をこのまま 君の見る先に 一緒に連れて行って欲しかった 「寒くなってきたねー」 「そうだな…」 冬を待つ 君の青色のマフラー 少し赤くなった頬が可愛くて いつの日か俺の中に走った 雷のような何かを思い出した そして 雷に映った君の横顔を思い出した 大会で負けたあの日 慰めに来てくれた君に 本音を撒き散らした 『負けたら俺じゃないんだよ…!皆が思うのは優秀な俺なんだよ…!負けちゃったら…生きている理由が分かんないんだよ!』 赤いマフラーが 心に残っている 君があのとき 何を言ってくれたのかは思い出せないけど 優しく笑う君に 愛してると言ってしまいたくなったことを 鮮明に覚えている 泣いてる君すら愛しく感じるようになって それに耐える俺は 心の中だけで君に愛を伝えていた 「バイバーイ」 「気をつけろよ」 君がいなくなってから三年 高校三年生になった俺には彼女ができた 青色のマフラーが似合う 可愛い女の子 あの子の長い髪と あの時のあいつの少し伸びた髪 長さは全然違うのに なぜか重なって見えて… 「お前と出会ってからの時間は…一瞬で過ぎていった…」 でも君がいなくなってからの時間は ゆっくりで まるで止まったように感じていた 「冬が終わる…」 君もあのときそう言った 赤いマフラーを外した君は 『やっぱりまだ寒いや』 笑ってマフラーを巻きなおしていた 君は冬を好むのに 春のように優しくて それは恋だと ずっと分かっていた 口に出すのは怖くて いつも心の中だけで伝えていた 「夢の中で会えたらなんて言おうかな…」 「…会いに来てくれたんだ」 今目の前に君が立っている あの時と変わらない 優しい笑顔で… 愛してると言ってしまえたら きっと楽になれる あのとき 雷と一緒に君は消えてしまった 笑う君を抱きしめてしまいたい 手を伸ばすと君はいない 「分かってるよ…」 君はもう ずっといない 「お前に会いたいよ…勇気…」
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