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君への恋心を抱いてから
何度このまま言ってしまえたらと思ったか
数えきれない
最低な俺は
君を困らせたくて
伝えようとして
あの日、君を呼び止めた
『…じゃーな』
『おーまた明日』
『っ…………なぁ!勇気!』
『っと…なんだよー俺家に帰りたいんだけどー』
『わり…すぐ終わるからそこで聞いて』
『…しゃーないなぁ』
『俺さ…ずっとお前のこと』
『おう』
愛してたんだ
そんなこと伝えようとしなければ
君はまだ
きっとその笑顔を雷に映してくれていた
『…!あぶ…』
言い切る前に
何かが君を攫った
それは
春に響いた雷と
高い音を鳴らしたトラックだった
『え…あ……』
君が消えたことを理解するのに
わずか0.8秒
後悔をするには
十分すぎる時間だった
「好きだ…好きだったんだ…」
今更言ったって
君にはもう届かない
もし最愛の君に愛を伝えられたなら
俺はさよならをしたい
あの日君が
俺になんて言ってくれたか
思い出したんだ
『俺は…お前の胸が脈を打つ音を聞いていたい…大切な友達に生きていてほしい…生きる理由が分からないなら…俺のワガママのために生きてよ』
「はは…そのワガママを言ったお前がいないんじゃ…意味ねーじゃん…」
今年もまた
君の季節がやってくる
伝えられたらさよならをしたい
でも俺には伝える手段がない
だから生きるしかないんだ
あの日君を攫っていったのは
雷でもない
トラックでもない
呼び止めてしまった
俺だ
「…最高じゃん…俺が攫ったなんて…俺のものって証明してるみたい…」
たとえば
もし本当に
攫ってしまったことで
君を手に入れたなら
どうしてこんなに胸が苦しいんだろう
息がうまくできなくて
涙が枯れることはなくて
攫ったんじゃない…
「俺が…殺したんだ…!」
また響く
綺麗に
速く
叶うなら今
最愛の君に最速で愛を伝えたい
春に響いた雷と一緒に
君に伝えたい
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