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厨房からカウンター越しに、坊主頭に鉢巻を巻いた威勢のいい中年男性が、俺に声をかける。
「いらっしゃい!カウンター席で大丈夫ですかい?」
他には店員はおらず、この中年男性一人で店をまわしているらしい。
俺は、店主の言葉に黙って頷いた。
店主の男が、カウンター席の端に座っていた、俺と同じ年くらいか?
20代後半の小太りの青年に声をかけた。
「お客さん、すまないね。もう少し、詰めてくれるかい?」
青年は快く、店主の言葉に従い、俺の為にスペースを空けてくれた。
俺は青年に軽く会釈をしながら隣の席に座ると、その青年がすぐ話しかけてきた。
「ここの焼き鳥は、最高だよ。よかったら、1本食ってみなよ」
スーツ姿の俺と違い、青年は私服で飲みに来ている。
かなり赤い顔をしてるところを見ると、相当飲んでいるな。
休日で飲みに来てるってところか。
正直、まだ酒も頼んでいない俺は、戸惑った。
「いえいえ、大丈夫です。自分で頼みますから」
しかし、青年は俺の肩に手を回して、自分の皿から焼き鳥を1本手に取ると、俺に差し出した。
「特に、この皮がうまいんだよ。お薦めは塩よりタレだね!これ食ったら、他の焼き鳥は食えなくなるよ」
強引な青年の誘いを変に断って、気まずくなるのも嫌だし、俺は1本だけご馳走になることにした。
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