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梅雨の日の午後、夫を乗せた霊柩車が発車する。クラクションさえもの哀しい。
その夜、私の心身は泥のように疲れており、疲れ過ぎて目が冴えてしまう。
私は二、三日後に行おうとしていた夫の遺品を眠れぬまま整理した。
本の中から1枚の紙片が私の膝に落ちる。
何かのメモかしら……
『俺は君と出会う前から君と結婚すると決めていたよ。もう長くはない。今までは本当に幸せな人生だった。全て君のおかげ。俺に遠慮せずにまた新しい恋をして下さい』
照れ屋さんの夫らしいわ。
口でそう言ってくれれば良かったのに。
でも、あなた、ありがとうございました。
私もあなたのおかげで楽しく素敵な日々を送れました。
あなた、最期にひとこと。
あなたは亡くなってはいない。あなたは人生と言う長い夢から覚めただけなの。
どうぞゆっくりおやすみなさい。
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