夜桜

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それが彼女を見た最後になった。 もう一度黒枠の葉書を見る。 「京都にいってみるか・・」 そう呟いて歩き出す。 来た道を戻ると駅の人混みに紛れる。 券売機の前で立ち止まり料金を確かめ、京都迄の片道切符を買って改札を潜った。 携帯からダウンロードしたばかりのお気に入りの音楽を聴くために方耳用のブルーツースを少しきつめに押し込んだ。 京都行きの電車はもうホームに来ていた。 乗り込んで辺りを見る。 昼間の電車とはいえ人が多い。 よく見ると半数位は外国人の様だ。 京都に着いて河原町を歩く。 今は観光ブームらしく、あの静かな京都のイメージは跡形もない。 錦市場や寺町のアーケードでは中国語や韓国語のアナウンスが聞こえる。 それを悪いとは言わないが、情緒には欠けてしまう気がする。 ネットやWi-Fiが横行するのに、只言葉をを安易に飛び交わせるのはいかがなものなのだろうか? モバイルを活用すれば、その国の言葉を必用に応じて聞けるようなシステムの方が良いと思えるのは僕だけなのだろうか? そう思いながら円山公園に向かう道を歩く。 四条大橋を過ぎた辺りのようじ屋の前には修学旅行の女学生らしき団体が歩道に迄はみ出して列を成している。 相手に当たらないように避けながら公園を目指す。 行儀がとか道徳心がないなんて言う積もりはないが、やっばりなんか寂しい気持ちになる。 普段外国に住んでいるせいだろうか? 日本人の、日本人にしかない奥ゆかしさや、相手を思う優しさが素敵だと思うのだが。 果たして今の日本人の中にそれは残っているのだろうか等と疑ってしまう。 (僕も年かな?) そう呟く。
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