お見合い話

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「透、今度のお休み、こちらのお嬢さんに会ってみない?」 僕、雪下透が仕事に向かおうとしたとき、母さんがパタパタ足音を立てて一枚の写真を見せてきた。小さな顔に大きな瞳が印象的で紅をひいた唇はぷっくりしている女性の写真。 美人だとは思う。 「宮原子爵のところのお嬢様よ。美人な方ね。たしか透と同い年だったわ。話、合うんじゃないかしら?」 僕はもう26歳だ。こういった話は24歳の春から少しずつされるようになった。僕の家は伯爵家だし、まわりの華族の友人たちもお見合いをしているというので僕もするべきなのかもしれない。けど、 「ごめん、その人とは会うつもりない。」 そう言って母さんを見ずに玄関から出た。 きっとがっくり肩を落としているだろう。 一度くらいお見合いしてみればいいじゃないと思う人もいると思う。 実は一回だけお見合いをしたことがある。 去年の春に。
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