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「透、佳乃さんはとてもいい子だが、没落した家の子だ。いい家の娘と結婚した方が今後の仕事の昇給も優遇されるんだぞ。」
父さんに厳しく諭されるけど僕は大きく首を振る。
「絶対、嫌です、佳乃さんじゃなきゃ。」
「ねえ透。」
父さんと僕が言い合ってると母さんが会話に割って入った。
「佳乃さんのおうちが没落前の状態に戻して差し上げます、と言われたらどうするのかしら?」
・・・・え?没落前の状態に?
「家も土地もすべて差し押さえられたものは戻ってきて、使用人が何人もいる優雅な生活に戻しますって書いてあるわ。そうしたら自分の家と対等になり今度こそ佐々木佳乃と結婚できるって。」
「ごめんくださーい!!」
どこかで聞いた声、次郎の声だ。今度の茶会の菓子について次郎に任せたので試作をしてもらったのだ。・・・ん?次郎なら関わり深いんじゃないか?次郎のお兄さんが佳乃さんの元婚約者の専属の菓子職人なのだから。
「玄関先に僕の知り合いが来てしまったので行ってきます、失礼します!」
そう早口で言うと急いで次郎のところに向かった。
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