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その手紙が届いてから2日経ったころ。
「ごめんください。」
柔らかくも芯の強いであろう声が玄関先で聞こえた。
「え・・・。」
僕の家では玄関先で声を掛けられても相手が誰かまでは分からない。声が高ければ女の人とかそんな感じしかわからないのだ。そして今は茶会の準備のために使う部屋掃除を僕と佳乃さんがやっていてバタバタしていたものだからどちらの性別の人が来たかもわからなかった。
「はーい!私、行きますよ!」
高いところの掃除をしていた僕に気を遣って、佳乃さんは笑顔で訪問者の対応を引き受けてくれた。
「遅いな・・・。」
佳乃さんがなかなか帰ってこない。もう高いところは拭きおえてしまったのに。変な営業に捕まっているのかもしれない。僕は急ぎ足で玄関に向かった。
「佳乃。僕は今でも君のことが好きだ。」
廊下の角で、はっきり男性の声が聞こえた。その声が顔を見なくても手紙の送り主、宮原佐太郎だということは分かった。
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