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「あの時、佳乃を手放したことを今でも悔やんで悔やんでたまらない。好きだけでは終わらないんだ。」
時間がかかってでも別れて結婚してくれと佐太郎は佳乃さんに何度も言った。
僕は帰ってくれ!と玄関先で言ってもいい立場なのにできなかった。いや、出て行こうとしたときにこんな言葉を聞いてしまったからだ。
「佳乃だって僕との結婚生活楽しみにしていただろう。」
「ええ。だけど・・・。」
佳乃さんが佐太郎の言葉に肯定したとき僕の頭の中は真っ白になった。
そうだよな、没落しなかったら、佳乃さんは普通に佐太郎と幸せな結婚生活送っていたのだろう。僕より佐太郎とのほうが付き合いも長くてお互いのことをよく知っているんだ。なんだったら、僕と佳乃さんより夫婦らしく見れるかもしれない。
「嫌だ・・・。」
まだ佳乃さんと佐太郎は話してる。僕は嫌なことばかり考えてしまう。
僕は玄関から遠ざかり、勝手口からそっと外に出た。今は自分の家にいたくなかった。
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