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「佳乃はさ、俺のこと好きだよね・・・。」
結婚が破談になる前、私たちが婚約していたときは佐太郎さんは自分のことを僕と言っていた。
「好きでしたね。」
過去形であえて返した。聡い佐太郎さんなら分かるでしょう。
「・・・。」
「あの時は好きでした。」
黙ったままの佐太郎さんにもう一度言う。
「小さなころから仲のいい佐太郎さんとだったら素敵な家庭を作れると思いました。私の級友では顔の知らない大分年上の男性に嫁がねばならない方もいたので私は幸せだと思っていました。あなたのことはよくわかるので。」
「だったら・・・。」
「私の結婚がなくなり、もう私は誰のところにもお嫁にいけないのだと思うと自由は得ても女の幸せは失ってしまいました。これも運命かと諦めたとき、
透さんがお嬢様ではない私を見つけてくれました。・・・私は初めて恋しました。」
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