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「は?味方?・・失礼だがあなたが誰かも分からないのに味方といきなり言われても困る。」
彼女は整った眉を一瞬寄せた気がした。けれどすぐ、笑顔で、
「東条・・・て聞いたらさすがに分かるでしょ、あなたも。」
財閥に近い力を持つ一族だ。その名字を聞くと、すぐその家を思いつくこ
とができるぐらいだ。これでも一応、僕はこのような家の人相手に毎日商売している。どの取引先も大事だが、東条家は一番神経を使い、大事にしている家だ。もし何かあったら消されると聞いたことがある。
「ああ、東条家は俺も知っている。・・・だが俺は君のこと何も知らないんだ。」
「なんで、知らないのよ!」
素直に名前教えてくれればいいのに、そう思う。だって本当に知らないのだから、君のこと。
「佳乃ばかり見ていたから。俺の中で令嬢はいつだって佳乃だけだから。」
どこからか舌打ちが聞こえた。あたりを見渡しても舌打ちした相手は見当たらない。俺と目の前の彼女だけだ。
「東条蘭よ。佐太郎さんは佳乃さんを、私は透さんを手に入れるためにお互い協力して幸せになりましょ?」
蘭は笑顔で俺と強引に握手した。
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