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「それはどうしてだ?」
「ん?内緒かなあ。
あ、ラウルス様の部下さん達はちゃんと生きてるよ。
でも、記憶は消されてると思う。」
食事を終えたのか、ヴェルは立ち上がり、俺のいるベッドへ近づいてくると俺の隣にぴたっと身体を寄せてきた。
「じゃあ、俺も消されるのか?」
「…消されたい?」
「…いや、出来れば覚えていたい、お前のことを」
覚えていなければ人魚伝説の真実を伝えることも出来ないからな、というラウルスの言葉の裏に隠された思いを知るはずもなく、ヴェルは、
「…本当に?」
と信じ切ったような台詞を呟く。
王へ体重を預け、肩にもたれかかるその姿は心を許し始めているように見える。
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