2.覇王

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2.覇王

「国王様、ご帰還、お待ちしておりました」 そういって多くの従者に迎えられているのは陸で最も大きな華の國を治める国王、ラウルス・フロルである。 「ああ、留守の間に問題はなかったか?」 上着を側近に渡すと、大きなソファに腰を下ろした。 しかし、盛大な迎えであるのにも関わらず、ラウルスの表情は晴れない。何か不満そうである。 「ええ、大きな出来事もなく。 ……しかし、無事に還ったというのにまたそんな顔をして。 はぁ、その様子だと特に収穫は無かったのですね」 呆れた顔をする側近、リヒトを睨みつけ、ラウルスは出されたばかりのレモンティーを啜った。 ……彼がため息をついている訳、それは彼の趣味にあった。 彼の趣味はこの部屋を見渡せばすぐに分かる。 持ち主の感情によって色を変化させる薔薇やドラゴンの目から落ちた宝石、死んだものを生き返らせることの出来る、血の如く紅い石など。物珍しいものや美しいものばかり。 そう、彼の趣味はコレクションである。 戦に出る度、それをいいチャンスとして行く先々で珍しい物などを探して持ち帰るのが唯一の楽しみであった。 しかし、今回はラウルスのお眼鏡に叶うものはなく、このように落胆しているのだ。
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