狐狼

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怪我が治ると、理人は女性達を貪り続けた。理人が声をかければ恋人がいようがいまいが、彼女達は理人についていき、派手に乱れてみせた。狂ったように腰を振る彼女達を見ている時だけは、理人の復讐心が満たされる。 ユカリが休みの日、理人は朝から彼女の部屋に侵入した。彼女はベッドの上で丸くなり、寝息を立てている。キスをして舌先で彼女の唇をつつけば、理人を迎え入れようと開いた。理人は深く絡めはせず、ユカリの舌に触れただけで離れる。 ユカリは目を開け、理人を見つけると苦笑した。 「もう、なにしてたの?」 「キス」 そういうことじゃなくて、と、ユカリはまだ笑う。だが笑顔はすぐに消え、鬱屈そうに目を伏せた。 「理人くん、大事な話があるからリビングで待っててくれる?」 「分かった」 理人は大人しくユカリの部屋を出た。 台所へ行くと、理人はふたり分のインスタント珈琲を淹れる。 「そろそろ潮時か……」 理人はいつかユカリに追い出されることを悟っていた。いくら外で他の女性達と遊んでも、彼女は文句を言ったことがない。つまり、嫉妬をしていないのだ。 ユカリは理人に溺れることなく、本当に遊び相手と思っている。それは理人にとってありがたいことだが、追い出されることを考えると、自分に恋情がある女性の方がよかったかとも考える。 珈琲を置いてリビングに座ると、着替えを済ませたユカリが降りてきた。 「おまたせ」 ユカリはぎこちない笑顔で、理人の前に座った。
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