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理人にとって退屈な授業が、短い休み時間を挟みながら過ぎ去っていく。彼はノートこそとるものの、勉強は好きじゃない。それでも平均点より少し上をいかないと父親がうるさいから、仕方なくノートはとる。
昼休みになると、理人は購買に行って食事パンと緑茶を買って教室に戻った。理人の机には芳樹と近くの生徒の机がくっつけられ、芳樹の後輩である総悟もいる。ふたりは弁当を広げ、雑談を楽しんでいる。
「今日は一段とにぎやかだな」
理人が席に座ると、ふたりはニヤニヤする。
「お、来た来た」
「ちょうどいいところに」
「……なんだよ」
ふたりがこんな顔をする時はろくな話でないと知っている理人は、あからさまに嫌な顔をする。
「そんな顔しないでくださいよ」
「なんの話してたんだ?」
はやく話を終わらせようと、理人は総悟を急かす。
「理人はさ、好きな女子とか好みの芸能人いる?」
「はぁ?」
この手の話に興味が無い理人だが、ふたりとしては学校イチのモテ男の好みが気になるらしい。
「ちなみにヨシ先輩は桜子先輩ですよね」
「あ、おい……なに勝手にバラしてんだよ」
芳樹は勝手にバラされたのが恥ずかしいのか、柄にもなく頬を染める。
桜子というのは理人達と同じクラスの女子で、ショートカットが似合う清楚系だ。
「で、理人先輩は?」
「そんなもんいるか」
理人が吐き捨てるように言うと、ふたりは肩を落とした。総悟もいないの一点張りで、結局芳樹の意中の人がバラされただけでこの話は終わった。
放課後、理人が帰る支度をしていると、芳樹が彼の机の前に来た。
「どうした?」
「朝の話の続きしようかと思ってさ」
芳樹はイタズラっぽく笑う。
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