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あれから数年後、蓬来は死んだ。 俺が、あの白髪混じりの黒い短髪の頭をした背の高い背中を見たのは、あの日が最後だった。 気付いたら俺は、蓬来と同じ地位の僧侶になっていた。 「いつか、追い越しちまうな、こりゃ」 裏庭で、俺は小さく呟いた。 「あっ、ちょっと江暝様。集会はサボっちゃいけないと毎度申しているのに……」 と、真面目な下っ端の僧侶が、俺を見つけて言った。いつかの風景と似てると思った俺は、小さく笑って応えた。 「仕方ねぇだろ? 一服日和なんだからよ」
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