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いつも通りの風景が奥の方まで続いている。右を見ると校舎と旧校舎が並んで佇んでいる。
「おはよう、ヒデ!」
言葉だけ聞くと卯月さんな気がするがそれは男の声だった。そして僕の男友達といったら一人まで絞り込める。横を見ると案の定その男だった。黒いパーカーに青いジーパン。服越しでもわかるガタイの良さ。そして何より燃え盛るような綺麗な赤髪。ここらへんを占めるヤンキーの虎岩焔で間違いないだろう。
「僕最近思うことがあるんだ」
「なんだ?」
「僕ってヤンキーに好かれる体質なのかもと思い始めている」
「ハハッ、間違いねぇ」
焔は高校に入って一週間で、三年生全員を仲間合わせて三人で占めた正真正銘のヤンキー。それから一週間でその三人は退学となった。それからは何故か僕は焔に気に入られ、付きまとってくるようになった。鬱陶しいことこの上ないが、僕に矛先が向かないならいいだろう。
「あれだろ、賢吾に勝ったんだって?」
「別に、やり合ってたら確実に負けてる。あれはただの嫌味だよ」
「まぁお前になんかあったら俺が直々に謝らせたんだがな」
「どうせなら何か起こらないように努めてくれないかな」
「俺は自分から喧嘩は売らない主義なんでね」
「じゃっ」とだけ言って焔は路地裏に消えていった。僕は曲がり角を右に曲がって校門を抜ける。
「おはよう、ヒデ」
「君たちは朝から元気だね…」
「……?」
今度は正真正銘卯月さんだ。茶色い制服が綺麗な紫色の髪とマッチしている。
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