4人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでさ、取り巻きってなんのこと?」
「何がそれでなんですか?」
当たり前のように僕の隣の席に座る卯月さん。席表を見るとたしかに僕の隣の席には小野寺卯月と書いてあった。
「取り巻きって……賢吾の事?」
「そうです」
「賢吾はただのストーカーだよ。離れてって言っても頑なについてくるんだ」
「なるほど」
「でももう大丈夫だと思うよ。昨日告白されてそれを振ったから」
賢吾とは一年生の頃のこの学校の支配者、奥沢賢吾である。金髪と学年一のデブということで有名になっている。いつも卯月さんの後ろをついてきて、近寄るものを押しのける用心棒的役割をやっているつもりでいるようだ。お陰で近寄りがたい雰囲気が染み付いてしまっている。
「お前!」
教室の入り口あたりから声がした。噂をすればなんとやらというやつだ。
「卯月さんから離れろ!お前みたいな地味な奴が話していい相手じゃない」
「ここ僕の席なんだけど」
「うるせぇ!口答えするな!」
「賢吾!」
卯月さんが柄にもなく大声で賢吾に怒鳴りつける。
「英之の事を悪く言わないでくれる!私の友達なんだぞ!」
「そんな地味なやつのどこがいいんですか?」
卯月さんは僕の本を覗いてきた。
「なんていう本?」
「斜陽っていう小説です」
「ちょっと、卯月さん?」
「うるさい!話しかけないで」
最初のコメントを投稿しよう!