第一章 消えゆく人々 ①

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「……」  賢吾は黙って教室から出ていった。卯月さんの表情を見るとものすごく怒っているのが分かった。 「あの…」 「…何?」 「ありがとうございます」 「気にするな、友達だろ」  それからは何事もなく時間が流れていった。クラスが変わったということで、誰も会話をしていなかった。それにしても卯月さんの隣の席と言うだけで男子からの殺気が凄かった。そして昼休み。 「君のことはヒデって呼んでいいか?」 「お好きに」  この学校は給食などなく弁当持参になっている。弁当を食べるところも自由で外で食べる人もいる。でも、クラスが変わって教室で話をしながら弁当を食べているのは僕と卯月さんだけだろう。 「じゃあ私と話すときはタメ口で話すように」 「分かった」 「ずいぶん従順だね。嫌なら嫌って言っていいんだよ」 「別に」 「むぅー…」  卯月…さんが可愛らしく頬を膨らませた。面白くなさそうな表情をしている。そもそも一年間友達が一人もいない地味な男子に面白さなんて求めても…。実際賢吾の言っていたことは的を得ている。 「ところでなんで僕たち一緒に弁当を食べているの?」 「そりゃ…友達だから?」 「君にとって友達ってなんなの?」
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