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「心が通じ合えば友達」
「僕と君は通じ合ってると思う?」
「私のことを拒まなかった」
「それはどういう…」
「卯月さん!!」
説教するような口調で卯月さんの名前を叫ぶ。その声を発した人は見間違いでなければ賢吾だった。
「…なに?」
卯月さんは、明らかに不機嫌そうに返事をする。賢吾は反応することなく僕たちのもとへ寄ってきた。教室のみんなは怯えている。
「てめぇ!調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
賢吾がぼくの胸ぐらをつかんでくる。
「何の用?賢吾君」
「てめぇ…許さねぇ!」
賢吾は僕を殴ろうとしてくる。
「ちょっと賢吾!」
「卯月さん、大丈夫」
相手は純度百パーセントのガキ大将。対して僕は力も握力も平均以下の普通の男子生徒。正面からやり合ったら負けるのは目に見えている。なら僕が勝つ方法は一つ。周囲を味方につけること。とはいえみんなで力を合わせて賢吾を倒すのではなく、”賢吾は悪”ということに共感してもらって何となく居づらい空間を作り出すのが目的だ。それを実行するのに最適な言葉はこれだ。
「何とか言いやがれ」
「賢吾君、卯月さんにふられったていうのにストーカー?恥ずかしくないの?」
「お前!なぜそれを!?」
「何?賢吾、卯月さんに告白したの」
「ストーカーって、キモ…」
成功だ。この空間の主導権はいま僕にある。あともう一押しすれば勝ちだ。
「今日の朝、堂々と”話しかけないで”なんて言われたのに、よく話しかけられたね」
「てめぇ」
賢吾は僕を開放して出て行った。「覚えてろよ」なんて捨て台詞をはいて。
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