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放課後、なんとなく帰るのが面倒くさくなってなんとなく旧校舎にいる僕。なんだか違和感を感じる。今まで話したことない学校のマドンナと友達になって、賢吾に喧嘩で勝って、実感が湧いてないのかもしれない。
見たことのない教室、見たことのない廊下、何から何まで旧校舎は新鮮だ。でもなんで僕は初めてここに来たんだろう。この高校に入学して早一年、一度も踏み入れたことないなんておかしい気がする。とはいえ入ったことないのもまた事実。
「うーん…」
「何を悩んでるんだ?」
「そうだね、って」
久しぶりに二度見をした。僕の目の前、階段に座って話しかけてきた女子。スタイル抜群で大人びた雰囲気。何よりそれらを際立たせる腰のあたりまである綺麗な紫色の髪。そう、卯月さんだ。
「なんでいるの?」
「えっ…と、ここが好きだから?」
何故か疑問系で返された。
「そういうヒデはなんでここにいるの?」
「なんとなくだよ」
「なんとなくねぇ」
卯月さんは何かを考え始めた。ブツブツと独り言を言っている。
「ヒデ、一つ忠告しておく」
「はい」
「目的が本当になんとなくなら、もうここには来ないほうがいい」
「どういうこと?」
「そしてこの旧校舎のことは忘れたほうがいい」
「……?」
何を言っているのか分からなかった。たしかにここに来た理由はなんとなくだ。とはいえ来ないほうがいいって…彼女はなにか知っているんだろうか。考えても仕方がないので、取り敢えず帰ることにした。
そして気付けば家についていた。
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