第一章 消えゆく人々 ②

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「大丈夫?」 「う、うん」  男の子は階段にバリケードを作りながら私の心配をしてくれる。 「えっと…ありがとう」 「どういたしまして…」 「あの人たちは大丈夫なの?」 「あいつらなら大丈夫だよ…窓から見てみたら」  そこでは既に決着がついていた。気絶した約二十人の三年生と立ち尽くす一年生三人。この人たち…一体何者なの?  それから何事もなく家に帰ることができた。帰り道はその男の子が送ってくれたので心配することもなかった。 「それじゃあ僕はこれで」 「ちょっと待って!」 「……?」 「君の、名前を教えてくれ」  いつか恩返しするためにその名前を聞いておこう。 「僕の名前は東英之」 「今日はありがとう」  久しぶりだった。本心の笑顔を人に向けたのは。
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