第一章 消えゆく人々 ①

1/7
前へ
/56ページ
次へ

第一章 消えゆく人々 ①

 最後に、変わらぬ日常。当たり前のように過ぎる日々。そんな世界はとても平和で素晴らしいと思う。少なくともそれは非日常を泳いできた今だからこそ言えること。もし、これを読んでいるものがいたら絶対に覚えていてほしい。何かが違うと感じたら、それはすぐに忘れたほうがいい。なぜなら………。  心地の良いそよ風が木々の間から吹き抜けてくる。その風が優しく僕の頬を撫でた。今日は4月6日、高校の始業式だ。やっと二年生、学校にも慣れてきてぼっちにも慣れてきた今日この頃、クラス替えは心機一転に丁度よい機会だ。僕は今、家から徒歩五分の(かがみ)高校に向かっている。そして曲がり角を曲がると、そこにはいつもの見慣れた学校があった。三階建で左に校舎、右に体育館、後ろには旧校舎があるごく普通の学校。僕は当たり前のようにその校舎の中へ入っていった。  少し新鮮な教室。大きさや机の位置は一緒だけど、窓から見える外の風景の高さが違う。旧校舎の見え方も違ってくる。教室内どころか学校内に人の気配が見られない。どうやら一番乗りのようだ。始業式まで三十分以上あるため、暇つぶしに本を読むことにした。昨日姉さんに借りた「斜陽」という小説を、バックの中から取り出す。そして自分の席について小説を読み始め…ようとした時。 「ありゃ、一番乗りだと思ったんだけどな」  ここ、二年一組の教室に入ってきたのは大人びた雰囲気の女子生徒だった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加