民声

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 美味そうに食べる男の子を見て、周りにいた子どもらは「いいなあ」と不満を漏らした。  将軍はそこに居合わせた子どもたち全員に、何が食べたいか訊いて、注文した。  次第に大人たちにも訊くようになり、静かだっただんご屋が騒がしくなった。  酒もふるまうようになり、将軍はこうなることを待っていた。  酒が入ったらこっちのもの。素面(しらふ)では言えないことも、言いやすくなる。  こうして将軍は平民の日頃の不満を聞いて、対策を練るのが生き甲斐だった。  焼きだんご、三色だんご、だんご汁。将軍のお腹も満たされたとき、慌てて1人の小娘が店内に入って来て、将軍に向かって「川で人が溺れています」と伝えた。  将軍はその小娘の発言で、こうしてはいられないと思い、親仁に小判を2枚渡し「これで足りるか?」と訊いた。 「こんなには頂けません」と店主は断ると「じゃあ、大事に取って置け」と店を勢いよく飛び出し、小娘の案内で溺れている川に向かった。
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