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「残念ながら、君に才能があるようには思えない」
「えっ……」
間黒の口から出た言葉は、普段メディアの中で前向きな言葉ばかり発する彼とは反対のものだった。当然普段メディアの中の彼しか知らない少年は、言葉を失う。
「ピアニストは才能が命だ。それがない者は、どれだけ努力してもどこかで壁にぶつかってしまう。君のように若い者は、もっと自分に向いた何かを探すべきだね。そうすれば大成することができるさ」
「……そう、ですか。あの、ありがとうございました。あと、勝手に入ってすいませんでした」
それだけ言うと、少年はトボトボと去っていく。その背中には、間黒と出会った時のような勢いは感じられなかった。
「どうして、あんなことを言ったんですか間黒さん……。せっかく貴方に会いに来たのにあんな言い方ってないんじゃないですか!?」
「はぁ……残念だけどぼくは本当のことを言っただけじゃないか。それに曲がりなりにもプロである君も彼が才能がないかどうか分かったんじゃないか? ピアニストは才能がなければやっていけない、これはある種事実だ。それに、これは他人事じゃない――だろう?」
「それは……」
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