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「ていうかお前、間黒と打ち上げ行ったんじゃないのか?」
「あー、それはお断りしました。なんていうか、間黒さん敷居が高いって言うか」
「はっ、美人にお断りされたわけか。そりゃ可哀そうにな。じゃあ俺も変えるからお前も気を付けて帰れよ。帰ってまた練習しないといけないんでな」
「えっ、練習って今から帰ってですか……?」
「そうだが……俺、何か変なこと言ったか?」
城瀬の言葉に、奏は少し狼狽える。演奏会があったのは今日だ。しかも終わってまだ数時間と経過していない。奏は、城瀬が間黒と肩を並べる理由を垣間見た気がした。
「やっぱり、すごいなぁ城瀬さん」
「どうかな、打ち上げ行った方が楽しいと思うぞ。じゃあな」
そう言って城瀬は歩き出す。
「ううん、やっぱり打ち上げ行かなくて良かったかも。アタシも練習しないと! って、あれ……?」
城瀬が歩んでいく先、丁度道路脇にさっき見送ったはずの少年がいた。恐らく迎えか何かを待っているところなのだろう。しきりに道路を見渡している。だが、少年が車が来る方向と逆の方向を見ていた時だった。奏の目には、ふらつきながらスピードをどんどん上げて走ってくるトラックの姿が見えたのだ。
心臓が早鐘を打つ音が聞こえるかのようだった。
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