第1話「白と黒の鍵盤」

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 「ていうかお前、間黒と打ち上げ行ったんじゃないのか?」  「あー、それはお断りしました。なんていうか、間黒さん敷居が高いって言うか」  「はっ、美人にお断りされたわけか。そりゃ可哀そうにな。じゃあ俺も変えるからお前も気を付けて帰れよ。帰ってまた練習しないといけないんでな」  「えっ、練習って今から帰ってですか……?」  「そうだが……俺、何か変なこと言ったか?」  城瀬の言葉に、奏は少し狼狽える。演奏会があったのは今日だ。しかも終わってまだ数時間と経過していない。奏は、城瀬が間黒と肩を並べる理由を垣間見た気がした。  「やっぱり、すごいなぁ城瀬さん」  「どうかな、打ち上げ行った方が楽しいと思うぞ。じゃあな」  そう言って城瀬は歩き出す。  「ううん、やっぱり打ち上げ行かなくて良かったかも。アタシも練習しないと! って、あれ……?」  城瀬が歩んでいく先、丁度道路脇にさっき見送ったはずの少年がいた。恐らく迎えか何かを待っているところなのだろう。しきりに道路を見渡している。だが、少年が車が来る方向と逆の方向を見ていた時だった。奏の目には、ふらつきながらスピードをどんどん上げて走ってくるトラックの姿が見えたのだ。  心臓が早鐘を打つ音が聞こえるかのようだった。     
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