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お母さんがトラックに轢かれて死んでから数日経った後、何も食べられずに空腹で元気が無かった僕は、ゴミだらけの小さなトンネルに迷い込んでひたすら歩いていた。
遠くに出口らしき小さな光が見えていて、誰も助けに来てくれないとわかっていながらも僕は歩きながら力を振り絞って「にゃー」と鳴いてみた。何も起きなかった。
歩きながらまた「にゃー」と鳴いてみたものの、さっきと同じだった。何度もする体力が無いにも関わらずまた鳴いてみようかと思ったが、僕は鳴くのを止めて歩く事に集中した。
そして僕は、小さなトンネルからようやく解放された。が、目の前に広がるのは、ただただ何もない黒と白のコンクリートだった。遠くに丸い屋根の建物が並んで見えていたが、それらが気が遠くなる程に遠かった。
もうダメだ――その場に倒れこんだ僕は、もう死ぬんだと察した。
その時だった。遠くから屋根のライトを光らせて走るトラックのような車が、僕の方に近付いてきたのだ。そして僕の近くで停まり、運転席と助手席にいた2人のおじさんがドアを開けて外に降りた。
「……子猫だ……かなり痩せ……」
「……れじゃ離陸の支障にな……連れて帰るか……」
2人の会話は微かにしか聞こえなかったが、どうやら僕の事を助けてくれるようだった。僕に近付いて、両手で僕の身体をゆっくりと抱えてくれた事で確信に変わった。
その後、僕の事を保護してくれたおじさんの仲間である兄さん達の部屋に、僕の生活スペースが作られた。前々から使っていなかったらしい4本足の小さなテーブルをひっくり返し、その足と足の間に新聞紙とダンボールを重ねて作った即席の柵を設け、その中にトイレスペースや寝る為のタオルケットが敷かれた。
こうして僕は、ここで新たな生活を送る事となった。
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