起「本当に、隣に越してきたんですか……?」

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起「本当に、隣に越してきたんですか……?」

 隣の部屋からゴトゴトと物音がして目が覚めた。  どうせまた富ケ岡が騒いでいるだけだろうと、布団を頭までかぶって二度寝を決め込む。土曜日は一日寝て過ごすのが次の一週間を問題なく生き延びる秘策なのだ。築五十年を迎えた安アパートの薄い壁は隣の部屋からする音をほぼほぼ防いでくれないが、富ケ岡がしょっちゅううるさくしているから慣れた。このくらいの音ならば余裕で眠り直せる。  それにしても、である。富ケ岡は秘策のことを理解しているはずであり、平日の夜はうるさくしていても土曜日は静かにしてくれるのに、今日は朝っぱらからガタガタゴトゴトとどういう了見なんだ。夜になったら苦情を言わなければ。
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