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ピンポン、ドンドンドン。ピンポンピンポン、ドンドンドンドンドン――――。
……音の近さ的に隣室ではなく、私の部屋のインターホンとドアが叩かれている。スマホを見た。さっき目覚めた時から一時間ぐらいしか経っていない。
同僚はおろか両親にも教えていないこの部屋のインターホンを鳴らすのなんて宅配の人ぐらいなものだが、よく知った担当者さんはこんな雑な音は立てない。となると信じ難い話だが、他に私の部屋を知っている人物はひとりしかいない。
「うるっさい! 何の用だ富ケ岡、あんたどうやって私のとこのインターホンの鳴らし方を覚え……」
「うおっごめんなさい!」
「へっ?」
ドアを乱暴に押し開けると知らない男性が立っていた。百六十九センチの私より顔が下の位置にある、小柄な男性である。微妙におさるっぽい顔立ち、と言えなくもない。上は黒シャツ下はジーパン。その他特筆事項なし。
「……富ケ岡?」
「ちゃいます。今日から隣に越してきた大山いいます。ほんで、引っ越しといえば昔からお蕎麦ちゅうことで、こんなもんですみませんが」
大山氏はへらへらと笑いながら手に提げていた白い袋を私に差し出してきた。受け取って中を覗くと、近所のコンビニのチルド蕎麦が入っている。
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