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調停者、一ノ瀬
―――2041年、東京。
16年前とは打って変わり、この街は平和になった。
移民受け入れ政策の導入に伴って一時期増加した凶悪犯罪は、近頃ではその噂を耳にすることすらなく、もはや2度の世界大戦のような『過去の惨劇』として認知されてる。
いや、凶悪犯罪だけでない。傷害、窃盗、性犯罪・・・以前から存在していたそういう”普通”の犯罪(あくまで凶悪犯罪との比較であって、これらを正当化する意図は毛頭無い。)でさえも、今では『過去の惨劇』の括りの中に、ひっそりと肩を並べている。
この国では、もはや『犯罪』の2文字は死語なのだ。
現在日本国内の犯罪件数は減少の一途をたどり、近い将来にはこの国から完全に犯罪が消え去るとさえ言われている。これがどれだけ凄いことなのか、言わなくとも理解できるだろう。
これこそまさに、政府主導の『ユートピア構想』の元、新型AIによる犯罪予測を武器にした徹底的な取り締まりが成し遂げた偉業である。
………いや、実際には、”そういう一般論がある”という言い方の方が正しい。
世界一の治安国家、『犯罪を忘れた国』、日本。
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