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物語の中の女の子たちは、みんな幸せそうにキスをしているのに、どうして私はそうじゃないんだろう。
好きな人とキスをしているはずなのに、どうしてこんなに辛くて悲しくて、胸が痛むんだろう。
涙で視界がぼやけていく。
見慣れた部室が、歪んで見える。
まるで私と大和先輩の関係のようで……。
涙の向こうに見えた大和先輩の姿も、歪んで見えた。
「え……?」
慌てて身体を起こして袖口で涙を拭うと……クリアになった視界の向こうに、大和先輩の姿があった。
「どうし……て……」
「どうしてって、それは俺のセリフだよ! 凜ちゃん、どうしたの? なんで泣いてるの? 何かあった? 誰かにいじめられた?」
「っ……」
何か、あっただなんて……そんなの……。
「そんなの、大和先輩のせいに決まってるじゃないですかぁ……」
「俺……?」
「そうですよ……。大和先輩が、キス、なんてするから……」
拭ったはずの涙が、次から次に溢れ出してくる。
それと同じく、一度口からこぼれ出た言葉も堰を切ったかのように次から次へと出てきて止まらない。
「なんであんなことしたんですか? どうして?」
「どうしてって……気持ちがいいって、凜ちゃんが言ったから」
「っ……! さいってー!」
そう叫ぶと、私は部室を飛び出した。
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