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キスで恋して
放課後、いつものように私は天文部の部室にいた。
そして、私の向かいの席には――同じくいつものように眠る大和先輩の姿があった。
幽霊部員ばかりの天文部の部室にはいつだって私と大和先輩の二人。でも、だからこそよかった。こうやって大和先輩と二人きりの時間を過ごすことができるから――。
大和先輩と初めて出会ったのは、高校に入学してすぐにあった体験入部の時。どの部に入るか決まらなくて色々な部活を見学するうちに、私は真っ暗な部屋に迷い込んでいた。
何も見えないその部屋で、出口を探そうにも伸ばした手は何も触れることはなく宙を掴むばかり。
泣きそうになった私の耳に誰かの声が聞こえた。
「どうしたの?」
ほんの少し暗闇に慣れてきた目にうっすらと人影が映った。
その瞬間、カーテンを開けるような音がしたかと思うと、光が差し込んた。
声の主はどうやら先輩のようで、近付いてくると優しく私に尋ねた。
「入部希望?」
「ち、違います! 迷子になっちゃって……」
「迷子……」
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