ねえ、俺のこと好きになってよ

1/19
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

ねえ、俺のこと好きになってよ

 幼い頃の私たちは、いつだって一緒に笑い合っていたのに、いったいいつから変わってしまったというのだろう。  私は「いってきます」と玄関から声をかけて家を出た。すると珍しく両隣の家のドアも開いた。 「……よう」 「おはよ」  左隣の西村家からは遠矢(とおや)君が、右隣の加瀬家からは(たくみ)が顔を出した。  小学生の頃までは一緒家を出て、並んで学校に向かっていたというのに……。こうやって朝から三人そろうのはいったいいつぶりだろう。なんせ中高一貫の学校に三人揃って通っているというのに、三人で登校した記憶が一度もないのだから。 「おはよう! 珍しいね、二人がこの時間に出てくるの」 「……まあな」 「今日、日直なんだ」 「そっか!」  明るく言ってみるけれど、二人は顔を合わせることなく、私の両隣に並ぶと歩き始める。  私は、重苦しい空気に小さく息を吐いた。  私と、一つ年上の遠矢君と三つ年下の巧はいわゆる幼馴染で、お母さんが仕事で忙しい二人は、よくうちに来てご飯を食べていた。  だから、小さいは本当の兄弟のように育ったし、なんなら巧は私のことを姉ちゃん、遠矢君のことを兄ちゃんと呼んでいた。     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!