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「ふふ……」
「どうした?」
「ううん、巧とだったらきっと楽々で入れちゃうんだろうなぁと思って」
思い浮かべて笑った私を見て「そうだな」と言うと遠矢君は何故か黙り込んでしまった。
いつからか、一人先に大人になってしまったような顔をする遠矢君とは、こうやって気まずい沈黙が流れることが増えた。巧の隣にいるのとは違う息苦しさを覚える。雨が傘に当たる音がやけに大きく聞こえた。
何か話さなければ……! 私は必死に話題を探すと、口を開いた。
「そ、そういえばね! さっき巧が女の子と相合傘してたの!」
「巧が?」
「そう! 巧のくせに生意気だよね!」
そう言った私へ、遠矢君から返ってきたのは意外な答えだった。
「けど、最近あいつ人気あるらしいぞ」
「え……? 巧が……?」
「そう。バイト先に巧のクラスの女の子がいて、「紹介してください!」って言われて……」
「な、なんて言ったの!?」
「……別に。めんどくせえから断ったよ」
動揺して思わず掴んでしまった私の手を遠矢君はほどくと、冷ややかな視線を向けて言った。
「どこがいいのかねえ、あんなちんちくりん」
「そ、そうだね」
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