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そう、思っていたのに……。
「あずちゃん? どうしたの?」
「あ……」
「大丈夫? 具合、悪いんじゃない?」
壁にもたれかかって座ったままボーっとしていた私を、橘先輩が心配そうに覗きこんでいた。
あの告白現場を見た日から、一ヶ月が経った。けれど、私の中の気持ちはなくなるどころか大きくなる一方だった。
それもこれも、全部橘先輩のせい……。
「だ、大丈夫です!」
「ホント? ……ちょっと、失礼」
「え……?」
私の前髪に橘先輩が触れたかと思うと――気が付けば目の前に、橘先輩の顔があった。
どうして……。
「うーん、熱はないみたいだけど……あずちゃん?」
「っ……あ、あの……!」
「……ふふ、顔、真っ赤だよ」
おでこをくっつけたまま、橘先輩は可笑しそうに笑う。
後ろに下がりたいのに、背中には冷たい壁の感触が伝わってくる。
「あ、の……どいてください……」
「ん? どうして?」
「だ、だって……」
「恥ずかしい?」
橘先輩の言葉に一生懸命頷くと、しょうがないなぁと言って橘先輩の顔が離れる。
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