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屋上で一人ご飯を食べている私の耳に、階段をのぼる足音が聞こえてくる。顔を見なくても、その足音の主を私は知っている。きっと――。
「あーずちゃん」
「……こんにちは、橘先輩」
私の名前を呼ぶ声に視線を向けると、そこには想像通り……私と同じ陸上部の橘先輩がヘラヘラと笑いながら立っていた。
「そんな他人行儀な呼び方じゃなくて、純先輩って呼んでって言ってるじゃんー。あ、でもあずちゃんなら特別に純って呼んでも――」
「橘先輩、何か御用ですか?」
「つれないなー」
「そんなところも好きだけどね」なんて言いながら、橘先輩は私の隣に腰を落とす。
冗談でもそんなことを言わないでほしい。そんなこと思っているわけがないのに……。
私は、橘先輩の軽口を無視すると数十センチばかり横に避けた。けれど、そんな私の後を追うように、橘先輩は距離を詰めてくる。
「――そこ、友達来るんで」
「美樹ちゃん? そういえばいないねぇ。どこいったの?」
「お弁当忘れたから購買に……」
「なら当分帰って来ないね」
「え……?」
どういう意味かと顔を上げた私に、橘先輩はニッコリと笑うと「だって――」と言葉を続けた。
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