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確かにカッコいいし、優しい。何より誰にでも分け隔てなく話しかけてくれるから、私も橘先輩と話をするのが好きだった。
そんな橘先輩だから、こんなところで女の人と話していても特に不思議はないのだけれど……。
チラッとネクタイのカラーを見ると、橘先輩と同じ青だったからきっと三年生の先輩だ。
こんにちは、と言って通り過ぎればよかったのに、何故か私は自動販売機の影に隠れてしまった。
「それでさー」
「えー純君、それ変だよー」
「そうかな?」
楽しそうに笑う二人の声が聞こえてくる。その声を聞くたびに何故か胸が締め付けられるように苦しくなるのを感じた。
……やっぱり今からでも出て行って挨拶して立ち去ろう。
だって、これじゃあ盗み聞きだもん。
そう思った瞬間、橘先輩が何かを話しかけた。
「そういえばさ、俺――」
けれど風の音がうるさくて、よく聞こえない。なんて言ったの……?
立ち去ろうとしていたのも忘れて思わず身を乗り出した私は、さっさと立ち去らなかったことを後悔することとなった。
「……好きなの」
え……?
今、なんて……。
絞り出すようにして言う女の人の声が聞こえたかと思うと、橘先輩の嬉しそうな顔が見えた。
そして――。
「俺も、好きだよ」
告白……だ。
気付いた時には私は、その場から駆けだしていた。
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