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知っている人の告白シーンを見てしまうなんて。
そしてそれがまさか、橘先輩だなんて……。
「どうして……」
たいして走ったわけじゃないのに、胸が苦しくて動けなくなった私は、誰もいない校舎裏でしゃがみこんだ。
はぁ……はぁ……と肩で息をするたびにポタポタと汗が地面にシミを作っていく。
「橘先輩、モテるんだ……」
チラッと見た女の先輩はとても可愛い人だった。
それに……あんな嬉しそうな橘先輩の顔、見たことない。
ただの部活の先輩だけど、この二か月、明るくて、優しくて、一年生みんなのあこがれの存在だった橘先輩。
「みんなに……言ったら、悲鳴があがりそう……」
想像するだけで悲鳴が聞こえてくるようだ。
雪美ちゃんなんて今度告白する! って、張り切ってたし泣いちゃうんじゃないかな……。
「それにしても……ビックリしたなぁ……」
相変わらずポタポタと流れ落ちる汗を見つめながら、この汗が引いたら教室に戻ろうかな、なんて思った時、私は気付いた。
「汗じゃ、ない……」
頬を伝うのは汗ではなくて、これは……。
「私、泣いてるの……?」
目元を拭うと、指先に溢れ出ようとしていた雫がつく。
でも、どうして……?
泣く理由が分からない。
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