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こうやって、橘先輩が私に構うから……忘れなきゃいけないと思うのに、忘れることができない。それどころか、日が経つごとに、好きな気持ちが大きくなっていく。
離れたおでこを名残惜しく思いながらも、ドキドキと高鳴る心臓を落ち着けるために息を吐こうとした私の耳元で、橘先輩の声がした。
「あずちゃん、可愛い」
「ひゃっ……!」
「止められなかったら、キス、しちゃうところだったよ」
「なっ……!」
何言ってるんですか、彼女がいるくせに……!
そう言いかけた私の言葉は、屋上のドアが開く音で遮られた。
「ごめんー! 購買めっちゃ混んでてさー……って、あれ? 橘先輩?」
「あ、やっとレジ直ったんだね」
「そうですよー、だからもう買いに行けますよ」
真っ赤になった顔を必死で冷まそうと必死にパタパタと手で煽いでいた私をよそに、二人は話を続ける。
「そっか、どこに行ったかと思ったら屋上にいたんですね」
「まあね」
「私が、梓が一人で食べてるって言ったからですよね? ありがとうございました」
美樹ちゃんの言葉に、橘先輩は「あーあ、バレちゃった」と言って笑った。
もしかして……私を心配して、来てくれたの……?
「橘先輩……?」
「まあ、そんなとこ」
「ありがとうございました」
「いーえ。こちらこそ、ありがとうございました」
ニヤリと笑うと、橘先輩は屋上をあとにした。
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