メモの行方

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 もう。人の恋心を笑いものにしようとか、やめてよね……と思ったけど、美和は私にどんな反応を求めているんだろう? せっかくだし、それに応えてやろうかな。  ノートの切れ端の空いている場所に、少し悩んで、私が書いた文字は――   『私も付き合いたいです。莉奈』  ――本音を書いてしまった。  どうせ美和にこのメモは戻って行くのだろう。美和が見る分には構わない。  たぶん彼女はこの後、私が田中君の前でどういう反応するのか見たかっただけで、返事が返ってくるとは思っていないと思う。これを見たらちょっとはビックリするんじゃないかな。  美和には後で、この悪戯の責任を取ってもらおう。田中君との橋渡しでも、お願いしちゃうのもいいかも。  メモを元のように小さく折りたたんで、後ろの佳苗に渡した。  私はこっそり、そのメモの行く先を目で追う。  教室の一番後ろの列を辿って、廊下側二列目からは教壇の方に上がって行くはずだ。――はずだった。  ちょっと待って、行き過ぎ!  そのメモは廊下側の二列目から教壇側へとは行かず、そのまま廊下側一番端の田中君の元へ渡った。  寝ていたと思っていた田中君が、それを受け取って開いた。――やばい。  見ないで!  私は心の中で叫んだけど、田中君はしっかりメモを見てしまっている。  でも、何か様子がおかしい。     
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