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プロローグ
死体が山のように転がっていた。
一、ニ、三、四……数えるのも嫌になるくらいの死体の数だ。
近くにはククリ(ネパールの山岳民族が使う刃物で、ナイフや剣などの種類がある)が落ちていたのを見ると、どうやらこの殺された者たちは誰かと交戦したのではないかと思われる。
「先輩、この事件は反政府武装組織同士の仲間割れでしょうか?」
「バカ!! 反政府武装組織なんて何年前の話をしているんだ!!! まったくこれだから田舎者は。ほれ、よく見てみろ」
先輩の警察官がククリラムの酒瓶をラッパ飲みしながら、たくさん転がっている死体の中の一つを指さす。
「これを見てもわからないのか?」
「はぁ、わかりません」
後輩の警察官は、当たり前のように言うと、先輩の警察官が持っていた酒瓶で後輩の頭を小突きながら言った。
「この死体は何度も同じところを切られている。こいつは相当な恨みがあるやつらの仕業だな」
先輩の警察官が言うとおり、何人かの身なりのいい死体の顔、手足や胴体には、無数の切り傷があった。
それはナイフで何度も抉るようにつけたような傷に見える。
先輩の話を聞いて後輩は言った。
「“やつら”ですか?」
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