第二章

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ゼラはメモを読むと、周りを見渡す。 2部屋しかない家なので、探すというほどの事でもないが、ゼラは薄いシーツから立ち上がり、隣の老人が寝ている部屋に顔を出す。 「いいか? 入るぞマヤ?」 そこは老人が横になったまま、ゼラの方を見ていた。 ゼラは頭を下げて言う。 「失礼をご老人。昨日は一宿一飯お世話になった。マヤに挨拶をしてから出て行こうと思ったのだが、もう出かけてしまったのかな?」 昨日の感じを見ると、返事はもらえない事を覚悟しながらも、ゼラは老人に訊いた。 「あの娘は仕事でね。それより君はゼラだったかな。こちらこそマヤが助けられたみたいで、本当にありがとう」 老人は昨日とは別人で、体を起こして、礼儀正しくゼラにお礼を言った。 「いや、お礼を言われるような事はなにもしていない。ただ、そういう男たちが嫌いなだけだ」 ゼラがそう言うと、老人は微笑んだ。 「……孫の恩人につまらない事を言わせてもらうが、女性のよそ者は早く街を出た方がいい。特にここタメルはな」 ゼラはそれを聞いて、皮肉っぽく笑顔で言う。 「カトマンズは他とちがうと思っていたけど、やっぱ同じなんだな。ネパールで1番すすんでいるところなのに……。結局、カーストの低い女には住みづらい」     
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