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ネパールの法律では、女性に暴力を振るう事は犯罪になるのだが、下層民の場合は法律が適用される事はない。
ゼラは、生まれた時からその事をよく知っていた。
「ゼラ……失礼な事を訊くが、君は不可触民なのかい?」
老人が申し訳なさそうに、ゼラに訊いた。
「いや、私には宗教なんて関係ないよ。でも、カースト制度が人生の中心になっている奴等から見れば、そうなるかもね。奴等から見たら、白人も黒人も勝手にカーストに入れているからな」
ゼラの話を聞き、老人はゆっくりと話す。
「ヒンズー教に基づいた君主制国家から、現代的な世俗国家に移行しているのは表面だけで、まだまだ中身は変わらない」
「じいさん……あんた下層民のわりに、大した見識じゃないか。それに話していて高貴な印象も受ける」
「はは、ずいぶん遠慮がないのだね。わしは下層民だよ。ただ若い頃に軍隊にいてね。使えると思われて、特別に教育を受けさせてもらったんだ。反政府の活動が落ち着いてからは、すぐに捨てられてしまったがね」
「そうか」
老人は悲しそうに笑っている。
ゼラはまた喋りすぎたと思い、言う。
「悪いが、やる事があるからもういく。マヤによろしく言っておいてくれ」
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