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「あぁ、しばらくカトマンズにいるなら、また来てくれたまえ。あの人見知りのマヤが、あれだけ懐くのもめずらしいからね」
「ありがとう。また近くに来たら寄らせてもらう」
ゼラは90度にお辞儀をして、マヤの家を出て行った。
「あんた日本人だろ? 円やドルを持っている人はサービスするよ!!!」
客引きが、慣れた日本語で叫んでいた。
ゼラは日本語がわかるので、嫌でも耳に入ってしまっていた。
マヤの家付近にある風俗街は、まだお昼だというのに繁盛していそうだ。
30~50過ぎの中年の外国人が、自分の子供くらいの少年少女とセックスがしたいがために、わざわざ飛行機に乗ってやってくる。
ゼラは、どうせならこの国の売春宿を正当な仕事と認め、手厚く保護してやれば、どれだけの人間が救われるかを考えていた。
……私の発想は貧困だな。
ララァが生きてたら、もっとスケールの大きな事を聞かせてくれたはず――。
ララァとは、ゼラと同じ村に居たアジア系白人で、野菜売りをメインにしたギャングのボスだった人物だ。
金髪の空に向かって立つお団子頭に、青い目で青い服を好み、誰からも愛される特別な力を持つ少女――。
だが、彼女すでに大規模な抗争で命を落としていた。
……ララァ。
ゼラが歩きながら考え事をしていると、いつの間にか風俗街を抜ける。
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