第三章

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ゼラは、刀をくれた男が連れてきた日本人の事を思い出していた。 ……あいつには、なにも言わずに出て行ってしまったけど。 先にいなくなったのはあいつだ……あいつが悪い……。 シャワーを浴び終わり、その日ゼラはすぐに眠った。 次の日――。 カジノへ向かったゼラは、それとなく聞き込みしていた。 「ちょっと聞きたいんだけど、この辺で急に羽振りがよくなった男っているか?」 「さぁねぇ。そんな景気のいい奴は俺の知り合いにはいないよ」 ゼラはそれとなく、地元民で裕福そうな者に訊いてみるが、なんの情報も得られなかった。 客は(あきら)め、次にカジノディーラーにも訊いてみた。 「この辺で、急に羽振りがよくなった男っているか?」 「お姉さん……あんた警察かい?」 「ちがう、人を探しているんだ」 「羽振りがいい奴ねぇ。まぁ、しいて言えば――」 ゼラはそのカジノディーラーの話を聞いて、またタメル地区に向かっていった。 ……タメルか。 また戻りだな。 ゼラはそう思いながらも、小腹が減ったので、近くにあったお店を見つけ、足を止める。 そして、サモサとマンゴースムージーを注文し、歩きながらそれらを飲み食いする。 ゼラは思う。 ……歩きながら食事するなと、よくシノに言われたっけ。     
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