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卒園式を終え人気のなくなった教室、今日までの自分の席に突っ伏して西の空に朱色の太陽が沈んでゆく様をぼんやり眺める。
「……好きです、付き合って下さい?」
「ずっと好きでした?」
「卒業したので私を生徒でなく一人の女として見て下さい……?」
あの人に伝えたい想いを色々呟いてみるが、どれもしっくりこない。
仲良しの友人には後で結果報告するからねって笑顔で啖呵切ったくせに肝心なところで怖じ気ついて中々一歩が踏み出せず時間ばかりが過ぎていく。
一人ぼっち、朱色の教室は色合いとは違って冷たくて、寂しくて……。
何も出来ない自分が悔しくて目に涙が滲む。少し体勢を変えただけで、卒業祝いにもらった胸のプラスチックのピンクの小さなコサージュがくしゃりと音を立てる。
「おー、まだ居たのか?遅くならないように早く帰れよー」
「先生!?」
突然聞こえた大好きな人の声に心臓が口から飛び出すくらい驚いて身体が飛び起きた。
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